この知識があれば、フィナンシャル・テクノロジーを駆使した「一見お得に見える」金融商品のからくりを見抜くことができる。
円の金利が1%、ドルの金利が5%、現在の為替レートが1ドル120円として、1年後のドルの「先渡し価格」を考えてみよう。
円のままで120円を持っていたら、1年後には1%の利子がついて121.2円になっている。
一方、その120円で1ドルを買えば、1年後には5%の利子がついて1.05ドルになる。
1年後の121.2円と1.05ドルの価値を等しくする為替レートは、1ドル25.42円である。
この1ドル25.42円が、1年の先渡しレート、すなわち理論上の1年後の為替レートなのだ。
現在の為替レートと先渡しレートの差は、円とドルの金利差によって生じる。
1年先では、120円の4%で約5円であるが、2年、3年先では、その差がどんどん広がっていく。
5年後であれば、1ドル98.82円である。
これは、「5年後にドル建てで元本を保証する」ためには、約99円あれば足りることを示している。
つまり、現在の1ドルに相当する120円を受け取り、そのうち99円相当をドル預金して、残りの12円で株を買えば「5年後ドル建て元本保証、円1%金利払い、株価連動型証券」の出来上がりである。
「(ドル建て)元本保証で、金利がついて、そのうえ株の値上がり益も狙える(値下がり損はない)」という「一見お得な」証券である。
フィナンシャル・テクノロジーを使った金融商品は、こういう仕組みで、複数の取引を組み合わせて作られる。
オプションを使えば、さらに「一見お得な」商品を簡単に作ることができる。
これは、決して不道徳な行為ではない。
証券会社は慈善団体ではないのだから、自分たちの利益になる取引しかやらない。
それは、当り前のことである。
自動車メーカーは、鉄板や電子部品やゴムを組み合わせて、加工費を上乗せした価格で自動車を売る。
証券会社は、複数の取引を組み合わせて、加工費を取るのである。
しかし、この種の商品は、必ず「抜かれている」ことは知っていた方がいい。
つまり、自分で組み合わせて投資した方が、この種の商品を買うよりも、原則的には得なのだ。
原則的には、と断ったのは、オプションなどを絡めた金融商品は、個人の少額の資金では複製できないからである。
問題は、組み合わせる際に、証券会社が利益を取るところにある。
先の例で言えば、実際は、証券会社は21円分の株を買うのではなく、2、3円を抜いて懐に入れて、18、9円分の株である。
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